星座とシネマ

自由と挑戦が運ぶ、最高の幸せ
射手座×「きっと、うまくいく」

2021.11.23

今月の星座の気分を目覚めさせる一本の映画を肴に、あなたの魂を養うメッセージをお届けする星占い×映画レビュー。
今回取り上げる映画は、スピルバーグやブラピも絶賛したというインド映画の名作「きっと、うまくいく」。
ストレス社会を跳ね除けて、愉快で自由な人生を生きる、そのシンプルな秘訣とは。

written by Naoko Okazaki

インドの神々は、踊る神々だ。シヴァやパールヴァティのダンスが宇宙を創造し、その躍動は今もなお森羅万象に息づいている。
万物が素粒子の旋回で出来ていることを思えば、
それは絶妙に真理をついた描写であるようにも思える。
人の心と体にも宿るそのリズムは、いつもわたしたちを踊らせようとするのだ。

美味しいものを一口食べればリーンと鈴が鳴る。
友達とふざけ合えば太鼓のビートがノリノリに騒ぐ。誰かに一目惚れしたら月がシャララ~ンと輝く。
わたしたちはみんな「心が踊る」感覚をちゃんと分かっている。

2013年日本公開のインド映画「きっと、うまくいく」は、
理工学系の超一流大学ICEを舞台に、エンジニアを目指す三馬鹿トリオの青春と人生を描いたコメディ・ドラマ。
動物の写真を撮るのが趣味のファルハーン、貧しい家庭出身で信心深いラージュー、そして、飛び抜けて成績優秀なのに規格外すぎて教授陣も手を付けられない自由人ランチョー。

寮のルームメイトになった三人は、競争社会で勝ち抜くことを絶対の正義とする鬼学長率いる大学生活を、どう乗り越え、どうかけがえのない親友になっていったのか。
物語は大学時代のタイムラインと、10年後のタイムラインが並行する。青春コメディでもあり、大人になったファルハーンとラージューが卒業後連絡の途絶えたランチョーを探しに行くロードムービーでもあるのだ。
その過程で、謎多きランチョーの過去と現在、思い出と未知が交錯する。

2021年11月23日から12月21日は射手座のシーズン。
射手座は、おおらかさと愉快さ、ポジティブマインドに支えられたチャレンジ精神が特徴だ。
射手座のシーズンにはこうしたマインドが刺激され、誕生星座に関係なく誰もが、自分の内なる「自由と挑戦の精神」に意識が向きやすくなる(と星占いでは考えられている)。

自由と挑戦。前向きでスカッとするような言葉だが、考えてみたいのは、ではこのふたつはどうつながっているのか?ということだ。

「自由」という言葉からは、気ままで、身軽そうで、格式張っていなくて、誰かに命令されたり強要されたりせずに、自分の意志でそのときそのときのやりたいことを選択・行動できるような、そんなイメージが湧いてくる。

チャレンジするということは、今までやったことのないことや、試したことのないこと、現状の自分の力量を超える未知のレベルやジャンルに飛び込んでみることだ。それは言い換えると、何度でも新しく、初心者になるということでもある。

前向きに、大胆に、おおらかに、世間の風潮に支配されず、オリジナルな理想に向かって行動しつづける……そんなふうに生きられたら、どんなにいいだろう。

しかし、映画の中で語られる「現実」はとても厳しい。
インドの若者の死因は病気や事故よりも自殺が多くて(ご存知の通り日本も世界最悪水準の自殺大国)、
この事実は人生に可能性も成長の幅もふんだんにあるはずの若者が、ポジティブにも、おおらかにも、大胆にもなれない社会の現状を浮き彫りにしている。

それは目標を達成するためにがんばって難関の大学に入学した、世間的にはエリートコースに乗っているファルハーンやラージューのような優秀な学生たちも同じだ。
ポジティブになりたくてもなりきれない。
「人生は競争だ。必死に走らないと蹴落とされる」そんなプレッシャーが優秀な彼らをつねに締め付けるのだ。

競争社会の発するメッセージは、こうだ。
必死にがんばって勝ち抜けば、成功できる。成功したら、自由に好きなことができる。
裏を返すと、必死にがんばらないと勝ち抜けない。勝ち抜けなかったやつは失敗する。失敗すれば、自由に好きなことはできなくなる。

人々は自由を人質に取られて競争する。
成功すれば解放される。そうすればもう、引け目を感じることも、ペコペコ媚びることも、自分を情けなく思うこともなくなるだろう。
親の期待に応えて、世間の期待に応えて、社会的責任を果たして、そうなったら罪悪感なく堂々と好き勝手に遊べる権利と力……つまり、自由が得られるだろう。そう考えて。

競争社会において、自由は贅沢品なのだ。勝者だけが味わえる美酒。
しかし映画の中のランチョーは、最初からまったく自由に振る舞う。

上級生が新入生を締め上げるため、パンツ一丁で並ばせて馬鹿げた芸をさせる、大学の男子寮あるある(おそらく軍隊式の“しごき”に端を発する、個々のプライドを折って、集団生活と規律、上下関係を叩き込むための伝統)にも、一切参加せず、それどころか上級生を撃退してしまう(どう撃退したかは映画をごらんあれ)。

大学生活の熾烈な競争を演説し、学生たちにムチをくれる鬼学長にも平然と口答えする。寮のシャワー争奪戦もどこ吹く風、庭で勝手に水浴びをして済ませる。
教授に逆らってクラスを追い出されたら、別の面白そうな授業に潜り込む。手持ちのお金がなくてお腹が空いていれば、他人の結婚式に忍び込んでごちそうを盗み食いする。

成功して(お金を払って)から手に入れるべきとされている「自由」を、ランチョーは最初から当たり前のものとして享受しているのだ。

ランチョーの摩訶不思議なポジティブさはどこからやってくるのか?
映画の序盤、ルームメイトのファルハーンとラージューに、ランチョーがその「秘訣」を語って聞かせるシーンがある。

「心はとても臆病だ。だからマヒさせる必要がある。困難が発生したときにはこう唱えるんだ“うまーく、いーく”」
「困難が去る?」
「無視する勇気が出る」

心はビクビク怖がりだ。ときめいたり、わくわくして、自分の内なるリズムを真摯に追ってダンスしていても、ちょっとしたことで踊るのをやめてしまう。

物音がすれば泥棒だと思うし、声をかけられたらなにか怒られるのかと身構える。
人生は変化の連続で、短期的に見て失敗でも、その向こうに成功があるかもしれない。そう頭では分かっていても、目前の苦労や失望の予感に耐えられない。

もちろん適切に警戒して、リスクを考えるのは大事なことだ。
でも、100%の安全が保証されないかぎり動けないなら、
その人生は常に誰かの後追いか、過去にすでにやったことの繰り返しから抜け出せない。

自分のリズムにしたがって未知のリスクを引き受けるより、他人の敷いたレールの上で安全に生きる方がいい。
怖がりな心はそう考えがちだけど、実はそれは、射手座的精神から見るととても愚かな決断だ。

なぜなら、他人の敷いたレールの上を歩いていても、困難も苦痛も失敗も、決して消えてなくならないからだ。
それどころか、他人が作ったレースに巻き込まれて生きるかぎり、自分の内なるリズムが本当に生きようとした人生が、わからないままだ。

つまり心は、適切でないことを恐れていることが多いのだ。

その上現代の競争社会は、人々の心の臆病さを巧みに利用する形で成立している。
自分の現状が自由ではなかったとしても、「下」を見れば自分はまだマシだと思えてしまう。不自由さに耐えて、理不尽を我慢してやり過ごせば「上」にいる人たちのようになれるかもしれないという期待もある。

すると、自由でなくても「まだマシ」な現状のレールの上から抜け出すことは、もったいないことのように思えてしまうのだ。

本当にやりたいことじゃなくてもいい会社に就職したら辞めたくないと思ったり、好きな相手じゃなくてもせっかく結婚できたんだから別れたくないと思ったりする。すでに手にしているものを手放すのは、とても怖いのだ。

ストレスフルな競争社会の中で、「そこそこ」を手に入れたのなら、それをキープしたいと思うのは理解できる。
生き抜くことを目的にするのなら、間違っているとは言えない。

だけど、ランチョーのような自由人を目にしたとき、わたしたちの心は騒ぐ。

彼は競争社会の中を生きていない。自分の人生を生きている。
そうやって生きていくこともできるのだという実例を見たとき、私たちは、自分の心の臆病さが、果たして適切だったのか、そうでなかったのかに疑問を持ち始める。

「うまーく、いーく」と暗示をかけて、心の怯えをなだめてやって、もしも本当に恐れが一切なかったら?と考えてみる。
「ぜったいにうまくいく」なんて保証は、実際にはもちろんどこにもない。でも「うまくいかないに決まってる」なんて保証もどこにもない。

ただ、ネガティブバイアスに支配されやすい心と、不安を煽るのが大好きな「社会の常識」を、ちょっと中和してやるだけでも、
チャレンジを成功させるためのステップが、もっとずっと冷静に見えてくる。

それだけのことが、他人の仕組んだ競争という小さな・超短期的な枠組みの中でどんぐりの背比べに全力をかけるという愚かさから、わたしたちを解放してくれる。

この映画の面白いところは、ランチョーはけっして競争そのものや成功を求めることを否定していないというところだ。

そうではなく、「競争」を仕掛けられると、本当に自分が求めていることか、挑む価値のあることかを考える前に、まるでそれがデスゲームであるかのように必死になってしまう臆病な心を、否定している。

いいねの数、年収、容姿、学歴、知識、部屋の広さ、センス、クレジットカードの色、タイムセールに間に合うかどうか……臆病さを刺激され、競争を煽られていることに気づかず、自分のリズムを忘れて、社会に調教されていることを憂えている。

なぜなら、人間の自由の精神は、ほんらい誰にも取り上げられるものではないから。社会に調教されるのではなく、社会そのものに必要な変化を起こして、イノベーションしていく力すらもっているものだからだ。

未来はその名の通り未知だから、怖がろうと思えば無限に怖がることができる。

怖がりなのは、生存本能でもある。

だからこそ、恐怖の向こう側に行こうとするのは意志だ。
本能をなだめて、広い世界を見ようとするのは、動物とは違う、人間精神の輝かしい発露だ。

ランチョーの姿はある人にとっては胸がすくような憧れであり、ある人にとっては恐ろしくリスキーに見え、またある人にとってはナイーブな理想主義に冒されて世の中の秩序を乱すただの自分勝手な悪ガキだ。

この3つの反応はそのまま、私たちが自分の心の中の「ランチョー」に対して取る態度でもある。
夢を生きることは憧れであり、怖いことであり、そしてわがままなことでもある。

だから射手座の精神は「おおらかさ」「笑い」を大事にしている。
自分のリズムを生きるということは、失敗も成功も、下手っぴさも恥をかくことも、すべて自分の責任だということ。
チャレンジするということは、積極的に初心者に戻るということで、それはいくつになっても、どんなに学んでも、まだまだ知らないこと・できないことだらけの、稚拙な自分に出会い続けるということでもある。

成功したから自由になれるのではなく、失敗する自分もおもしろくてかわいいと思えるから、いつでも無理せず自分らしく、自由でいられるのだ。そして「成功」は、たくさんの挑戦と笑える失敗の中で勝手に量産されるだろう。
インド映画ならではの、ちょっと力が抜けて笑ってしまうようなダンスシーンの愉快さが、このテーマを引き立てる。

品のないギャグが合わないという人や、敵役として描かれるキャラクターの単純化を子供っぽいと思う方もいるかもしれないが、
落ち込んだときや元気がほしいときに、あまり難しく考えず、異国の歌を聞くようにゆったりと見てみてほしい。

インドの雄大な自然、みんなで一緒になって踊って歌う楽しさ、ランチョーの突き抜けたポジティブさと情の厚さ、そしてハートを刺激する真を突いたメッセージに、最後はきっとヒーリングされてしまうだろう。

今月の名作

『きっと、うまくいく』
2013年に公開され、映画大国インドで歴代興行収入No. 1の偉業を達成。
全世界興収75億円を叩き出し、世界中でリメイクも決定するなど大ヒット。
ボリウッド旋風を巻き起こした。
ブルーレイ&DVD発売中、その他Amazon Prime Videoなどで配信中。
発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©Vidhu Vinod Chopra Production 2009.All rights reserved

岡崎直子/元・大手出版社社員。社員編集者からフリーライター期間を通して雑誌・新聞・書籍等で主にファッション系記事を執筆。
同時に占い師として複数の雑誌で連載を経験。
現在はYouTube、note等での情報発信およびオンラインでの占星学クラス等を開催。
https://www.youtube.com/channel/UCkBYHQILkcdeel-0KD7jbAQ
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