星座とシネマ

奇跡と魔法はいつも目の前にある
獅子座×「アイ・フィール・プリティ!
人生最高のハプニング」

2021.07.23

今月の星座の気分を目覚めさせる一本の映画を肴に、あなたの魂を養うメッセージをお届けする星占い×映画レビュー。
今回取り上げる映画は「アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング」。
もしも絶世の美女に生まれ変わったら? 自己肯定感の先に見えてくる、本物の魅力と才能とは。

written by Naoko Okazaki

「自己肯定感」という言葉が流行りだしたのはいつごろのことだったか。
キャリア選択や恋愛・結婚、子育て、職場の人間関係や家族の問題にも、重要な鍵を握るのは「自己肯定感」だと言われる。

確かに、同じようなイヤな出来事……たとえば仕事で意地悪をされるとか、SNSで友人たちのパーティをはじめて知ったとか……にぶつかったとしても、
前向きかつ柔軟に次の手を考えてさっさと行動できる人と、
「どうしてわたしばかりこんな目に」と落ち込んで動けなくなってしまう人がいる(正確には時と場合によって、誰もがそのどちらにもなりうる)。

そのふたりのリアクションの差はなんなのかというと、基本的な自己肯定感の高さ、「自信があるかないか」。
自信のある状態では、他人が自分を評価するかどうかに依存せずとも、自分で自分の価値を認めているから、しっかりとアンカーを下ろした船のように、波が打ち寄せても風が荒れても安定していられる。

一方で自信のない状態では、そよ風にもさざなみにもあっちへこっちへ引き回されて、今、舳先がどちらに向いているのかさえ見失ってしまう。

自信を持つことが大切。
それは確かだけど、でも、どうやったら手に入るんだろうか?

小さな成功体験を積み重ねるために、エクササイズや家事など、なにかささいなルーティーンを決めて実行することだろうか?
幼少期のトラウマや苦い恋愛体験など、ネガティブなエピソードを紙に書き出して、ビリビリに破いてみる?

手法としてはそれらも無意味ではないだろう。ばっちりハマって心がスッキリする場合もあると思う。
でも、もっと根本にあるものとは?
ぶっちゃけ、なにが手に入れば、今の自分のどこが変われば、あなたは無敵の自信を手に入れられるのだろうか?

つまり、SNSのいいねの数を無視して、同僚や友達の「あの子急にどうしちゃったの」という冷ややかな反応にめげずに、本当にしてみたいことに……金髪にしてみるでも、気になる人をデートに誘うでも、オーディションを受けてみるでも、
それが「不格好」から「似合ってきた!」のギアに移るまでの初期の重たいペダルを漕ぎぬき、チャレンジを軌道に乗せる、それほどの「自信」は、何が手に入れば身につくのだろうか?

今月の映画の主人公の場合、それは「ルックス」だ。
もしも美人になれたなら、私は無敵。それが彼女の自己肯定感のキー。

「自信」「自己肯定感」「無敵のセルフラブ」。それこそ、今月の星座・獅子座のメインテーマ。
そしてそのテーマを語るにふさわしい映画として、2018年公開のコメディ「アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング」を、今回は取り上げたい。

2021年7月23日から8月22日、獅子座のシーズン。獅子座生まれの人だけではなく、すべての人にとって自分のアイデンティティを深く問い、個性を輝かせるためのテーマが訪れる季節。

映画の主人公は、ニューヨークのビューティ&コスメブランドで働くレネー。
おしゃれが好きで、美容にも情熱があるけど、自分の容姿には自信がない。

コスメブランドの本社は五番街のハイエンドなオフィスで、非の打ち所のないモデルたちや、モデルと変わらないくらい美しいスタッフが行き交っているけど、レネーの職場は本社からかけ離れたチャイナ・タウンの地下にある「通販部門」だ。
そこでうだつの上がらない技術職のメイソンとふたりで、パソコン画面に向かって仕事をしている。

レネーの部屋にはファッション誌が積み上げられている。気後れしながら入っていったジムでも完璧なプロポーションの美女を見つめずにはいられないし、人気YouTuberのヘアアレンジチュートリアルを必死に練習もする。
ほとんど人に会わない職場でもちゃんとかわいいファッションで通勤しようという気概だってある。

レネーは美しい女性たちが大好きで、ファッションも美容も大好きだ。わくわく、ときめいている。
だけど鏡を見るたびにその心はしゅんとしおれてしまう。
憧れが美しければ美しいほど、鏡に映る「現実」とのギャップにがっかりしてしまう。

「ときめき」と「がっかり」の間をいつも揺れ動いているレネーの、心の底からの一番の願いはだからこれだ。

「昔からどんな気分か味わってみたかった。『圧倒的な美しさ』。きっと多くの可能性が拓けるわ。もしもあなたみたいに美しくなれたらね。たった一度でもいいから。……でもマスカラやファンデじゃ何も変わらないから。奇跡を願うだけ」

「アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング」は、いわゆるシンデレラものの冴えない女性の変身ストーリーだ。

ただ、この映画が画期的なのは、レネーは魔法で美女に変身したわけでもなければ、ダイエットに成功したわけでもなく、ただ単に、頭を打って自分が絶世の美女に見えるようになってしまっただけ、というところ。つまりは、勘違い、現実誤認である。

周囲の人の目に映る彼女は昨日とまったく同じままの、相変わらずの冴えないレネーなのだが、彼女自身の目にだけ、「無敵の美女」に見えるようになったのだ。

映画は、最強の自己肯定感「だけ」を手に入れた彼女が、周囲のとまどいを振り切って「無敵の美女」にふさわしい人生を切り開いていく様子をコメディで見せていく。

レネーは別にシンデレラのような「心優しい清らかな乙女」なんかではなく、あくまでも等身大の、普通の大人の女性だ。
自分が美しくなったと思えば普通に調子に乗りもするし、相変わらず失敗もするし、恥もかく。誘惑に弱くて、すぐ舞い上がってしまうところもある。

無敵になった彼女は「私みたいに容姿にめぐまれていると……」なんて、堂々と話すものだから、最初は「ジョーク?」と周りを戸惑わせもする。

しかしだんだんとそのあまりの本気ぶりにみんなが魅了されていく。
なぜなら、レネーの持っているその魔法は、シンメトリーな美貌や均整の取れたプロポーションよりもずっと珍しいものだからだ。

どんな容姿であれ、どんな性格であれ、その自分が世界で一番美しいと100%本気で確信して、それを堂々と表明できるということ。
それこそ、この現代社会の中でほとんど奇跡のように希少な魔法なのだ。

劇中、レネーの不思議な自信にだんだんと惹かれていくイーサンはこう言う。
「君は自然体だ。皆自分のことをわかっていない。自分のイヤなところばかりに必要以上に固執して、素晴らしい部分を完全に見逃してるんだ。君は自分を理解して、周りの目を気にしてない」

美しいメイクや最新のファッションで鎧っていても、誰もが心に不全感を抱えている。
それは、「完璧な理想」を常に自分の上に置いているから。現実の自分はいつも、理想に足りない、減点された存在でしかない。

だけどレネーは、すでに完璧なのだ。(頭の中で!)
もう自分は絶世の美女で、理想を達成していて、その完璧な自分がプラスアルファで、好きなことや面白いことをしているだけなのだ。

そこで表に出てくるのは、リラックスした、飾らない、素の彼女だ。
ノリが良くて、遊び好きで、ちょっと鈍くさくて、面白くて、下世話で、お調子者で、観察眼が鋭くて、情熱的で、知的な、「ふつうの」ユニークな女性。
たぶん誰もが、家族の前や、自分ひとりでいるときや、そして幼い少女の頃には当たり前に外に見せていたそのままの素直な自分。

変身した(と思い込んでいる)レネーの周りの人々は、最初に彼女の奇妙な自信を、そして次にその向こうに見えてくる自然体の彼女の魅力を好きになっていく。しかしレネー本人だけが人々の好意は「美しく変わった容姿」のおかげだと信じこんでいる。

その認識のギャップがさまざまなコメディを生み出して笑わせるのだけど、同時にそのおかしな光景は、日常的な人間関係の中であたりまえに繰り広げられているものでもある、と気付かされる。

ただし、よく見かけるのはレネーに起きたこととは反対の、「過剰にネガティブな自己イメージ」による、周囲との認識のギャップの方だけど。

私たちは、パッケージやCMを見て、商品がどんなものか想像するように、人間を見て、服装や、たった二、三の言動からその人がどんな人間なのかを勝手にイメージする。

そのイメージは当たっていることもあれば、とんだ大外れであることもある、要するにヤマ勘なのだが、根強く私たちの思考や感情に影響し、現実を歪めてしまう。

そうして、本気でやったこともないことを簡単にできないと言ったり、ひとりもその国の友達がいないのに、ある国の人々が嫌いだと平然と言ったりする。

他者に勝手なイメージを押し付けるように、わたしたちは自分自身にも勝手なイメージを押し付けている。

美しくないから、賢くないから、才能がないから、サポートがないから……冒険ができない理由ばかりがスラスラと出てくる。そこにあるのは事実ではなく、単なるイメージだ。

パッケージが赤いから、きっと辛口だろう、というくらいの当てずっぽうに過ぎないものなのに、自分による自分への決めつけに恐れおののいて、パッケージの内側にあるものを外に出せなくなっている。

美しく変身して人生を変えていく物語はたくさんある。
だけどこの映画がすばらしいのは、最初から最後まで、長所も欠点もひっくるめて、レネーは何も変わっていないというところなのだ。

つまりレネーにとって「美しい容姿」は、ダンボの羽だ。

その魔法の羽根のお陰で飛べていると本人だけが思い込んでいる。
けれど、実際には最初から本当は、ぜんぶ自分なのだ。
彼女は最初から、自分の力で人生を切り開き、成功し、人を惹きつけたのだ。

「ルックス」にせよ「賢さ」にせよ「才能」にせよ、それさえあればとあなたが思っているもの。
ひっくるめて「自己肯定感」そのもの。具現化した自信そのもの。
それは、最初からそこにある、素のあなたを楽にさせ、笑わせ、リラックスさせるためのちょっとしたおまじないのようなものだ。

映画の最後、「魔法」が解けて、すべてのからくり……からくりなんて、最初から存在しなかったという事実を知ったレネーのスピーチは、とても笑えると共に感動的なので、ぜひ見て欲しい。

さて、ちなみに本作で主人公レネーを演じるエイミー・シューマーは、全米ナンバーワンと呼ばれる有名コメディエンヌ。VOGUEの表紙を飾ったり、自身で映画脚本を手掛けたり、ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされたこともあるアーティストだ。

そして日本語吹き替え版を担当するのが渡辺直美。ビューティスタンダードに物怖じせず、堂々と自分を美しいと言う日米コメディエンヌの競演も楽しいので、字幕版・吹替版ともオススメしたい。

今月の名作

『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』
試写会での高評価を受け、全米公開日を約2ヶ月ほど繰り上げた話題作。世界25カ国でヒット。
Blu-ray:5,280円(税込)DVD:4,180円(税込)発売中、その他デジタル配信中。
発売元・販売元:バップ
©2018 TBV PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

岡崎直子/元・大手出版社社員。社員編集者からフリーライター期間を通して雑誌・新聞・書籍等で主にファッション系記事を執筆。
同時に占い師として複数の雑誌で連載を経験。
現在はYouTube、note等での情報発信およびオンラインでの占星学クラス等を開催。
https://www.youtube.com/channel/UCkBYHQILkcdeel-0KD7jbAQ
https://note.com/naokookazaki

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