星座とシネマ

射手座×「ドリーム」

2020.12.01

星占い×映画レビュー。今月の星座の気分を目覚めさせる一本の映画を肴に、あなたの魂を養うメッセージをお届けします。

今回は射手座の夢見る力を盛り上げてくれる作品「ドリーム」です。

Written by Naoko Okazaki

世界を変えるような偉業を成し遂げる人、称賛と憧憬を集める天才たち、いや、そこまで高望みはしなくとも、才能・夢・理想を開花させて生きていく人々は「普通の人」と何が違うんだろう?

……と言ってもこれは、成功哲学の話でもセルフマネジメントの話でもなくて、映画の話。そして星占いのお話。

11月23日~12月21日(年によって少し前後します)、射手座のシーズン。射手座生まれの人はもちろん、それ以外のすべての人々にとってもこの季節は「夢と理想への飽くなきチャレンジ」がテーマになる期間。今日はそんな「射手座」の気分を刺激してくれる一本の映画をご紹介したいと思います。

2017年公開の「ドリーム(原題:Hidden Figures)」。アカデミー賞にも3部門ノミネートされた名作ですが、日本ではそこまで大きな話題にはなっていなかったかもしれません。この映画、「自分には輝く才能がある」と口には出さずとも信じている(実際、そう思わない人なんています?)すべての、常識に迎合し(たく)ない「マイノリティ」にとって痛快で、勇気づけられる、信念と努力の物語なんです。

舞台は1961年アメリカ、バージニア州ラングレー。激化する冷戦中のソ連との宇宙開発競争に、国家の命運と威信をかけて挑むNASA。物語の主役は、そこで働く3人の黒人女性数学者たち。史実に基づくストーリー。とにかくまず、最初にこの映画を観たときに驚いたのは、60年代のアメリカで、女性が、しかも黒人の女性があのNASAに雇ってもらえたの?というその事実。だって60年代といえば、キング牧師が活躍し、バスボイコット運動や抗議集会も激しく、水飲み場も、トイレも、レストランの座席も「純粋な白人」と「それ以外の人種」ではっきりと差別されていた時代だ。一滴でも黒人の血が混ざっていれば(つまり白人とのハーフやクオーターでも)黒人、という神経症的でサディスティックな、かつ常態化された差別の時代に、黒人の、ましてや女性が、NASAに?

しかしこれこそまさにアメリカ宇宙開発史の中で黙殺されてきた「隠された存在(Hidden Figures)」であって、主役のキャサリン・コールマン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンの3人はもちろん実在の人物だし、それ以外にも、一説によると数千人という単位で女性数学者たち(白人女性数学者もたくさんいた)が働いて宇宙計画を支えていたのだそう。

彼女たちの職業は作中で「コンピューター」と呼ばれていて、それは直訳すると「計算手」。「電子コンピューター」が本格的に実用化される前の時代、人間を乗せた金属のカタマリを弾丸のごとく空に打ち上げ、地球を周回させた挙げ句に狙い通りの位置に……間違っても敵国の領海や、激突したら飛行士もろとも跡形もなくすべてが吹き飛ぶ硬い地面ではなく、アメリカ海軍が捜索・発見して回収できるピンポイントの太平洋海上に……帰還させるための、すべての軌道計算や帰還用カプセルの強度設計は、この女性コンピューターたちが手計算ではじき出していた。電卓なしでは確定申告もままならない身としては想像もつかない世界だけれど、初期の宇宙計画はほとんど、黒板とチョーク、紙と鉛筆で、人間が方程式を導き出し、実行したのだ。

時代によって可視化された、「表立っていじめても構わない」ことにされた差別は、人間の心の醜い矛盾を露呈させる。NASAにおいても、黒人女性数学者たちはその実力によって重用されながら、まるでそれが真っ当なことかのように差別される。(ちなみに白人女性数学者も「女性」ゆえに差別される。白人男性・白人女性・黒人男性・黒人女性という順で定着した差別の階層がさりげない日常のやり取りの中に描かれるのもこの映画の興味深いところだ)

天才数学者キャサリンは、人種と性別の壁を超えてエリート中のエリートが集う(つまりほぼ白人男性しかいない)宇宙特別研究本部メンバーとして抜擢されたにも関わらず、「黒人用のトイレ」のためにディズニーランドのように広大なNASAの敷地を毎回1キロ近くも走る羽目になる。宇宙特別研究本部に実力で「飛び級」入所を許されながら、目の前にある白人専用のトイレには入れない。雨の日だろうがずぶ濡れになって「黒人用トイレ」までヒールで走る。それは滑稽で、ばかばかしくて、シュールで、そして胸が痛む光景だ。

誰かが、その才能や輝きをドブに捨てている姿ほど、見ていて気分の悪いものはない。もちろんキャサリンは時代と社会からの圧迫によってそうしているわけで、才能をドブに捨てているわけではない。むしろ才能を活かして、当時の黒人女性としては破格の名誉ある仕事についていたわけだけど、悪意を黙って受け入れているとき、人は自分の魂に泥を塗っているのだ。

悪意は往々にして「これまでの常識で処理できないものごと・人」に向けられる。自分たちの常識で理解できないものを「悪いもの・劣ったもの」と思い込んでしまう癖が人間にはあって、モノサシで測れないものにぶつかったらほんとうはモノサシの方をアップグレードすべきなのだけど、それがなかなかできない。むしろ古き良き、シンプルで美しい伝統的価値観の世界を攻撃されたように感じて、過剰に防衛的になる。それまでの常識で測れない新参者がやってきたとき、そこにいる全員が変化を迫られる。そしてそれは、変わりたくなんかないすべての人々に猛烈な反感を呼び起こしもする。差別はそうやって「今までの自分」を守るために生まれる。

こういうことは社会のなかではもちろん、自分の心の中でも日々巻きおこっている。「わたしにはこの程度の日々が似合ってる」「ちょっとくらい得意なことや好きなことがあるからって、常識を変えられるとでも?」「壁にぶつかったり、ちょっと難しくなったら、どうせすぐ諦める」「今までもずっとそうだったんだから、これからだってそうに決まってる」「性格は変わらない」こうした自己対話はほとんど人種差別に使われるフレーズと変わらないと思うのだけど、どうだろう?

過去に基づいたモノサシで、まるでそれが真っ当なことであるかのように振るわれる否定と悪意を黙って受け入れ、才能を活かすためではなく、ルールを遵守するためにあてがわれたトイレまで走る? それとも、変わるべきなのはモノサシの方だとその輝きで証明する? あらゆる瞬間に選択肢はあって、変化を選んだときに人は、モノサシではなくて才能を頼みにした人生……つまり自分自身を天才として扱う人生……に一歩踏み出す。

主人公のひとり、エンジニア志望のメアリーのセリフを引用しよう。「肌の色は変えられません。だから前例(The first)になるしかありません」。ルールや、経験則に基づく予測や、自己不信が情熱に水をさしそうなときに思い出したい言葉だ。天才として生きる人はみんな、前人未到のオリジナルな道を歩く。一歩一歩が掛け値なしのFirst Step。挑戦すること。才能を輝かせること。夢を生きること。未知に真向かうときのスリルが、射手座的魂のいちばんの糧です。

偏見を払拭し、環境に変化を起こすことは、ときに人間を宇宙に送るより難しい。なぜならそれこそ、人間にとってほんとうに本質的な挑戦だから。大切なことと、不要なことを見分けられるようになること。そして、本当に大切なことのために人生を使うこと。あらゆるネガティブな出来事の反対側に、自分の本音はいつでもちゃんと存在していると知ること。それがわかったときに、モノサシにぎゅっとしがみついていた手から力が抜けて、世界が変わりはじめる。自分や他人のほんとうの声が聞こえはじめる。

ファレル・ウィリアムス作曲のファンキーなサントラ「Surrender」でレイラ・ハサウェイが歌う。「I surrender(私はもう諦める)」と。諦める。嘘をついて自分を説得するのを、諦める。私は人生にも世界にも期待していないと言い聞かせるのを、諦める。モノサシの方がこの情熱よりも正しいとがんばって思い込もうとすることを、諦める。だってこの心で見ているぴかぴかの未来のほうが、現実よりもずっと現実だ。そう思わない人なんています?

今月の名作

『ドリーム』
ブルーレイ発売中/デジタル配信中

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
発売/ウォルト・ディズニー・ジャパンブルーレイ/¥1,905+TAX

岡崎直子/元・大手出版社社員。社員編集者からフリーライター期間を通して雑誌・新聞・書籍等で主にファッション系記事を執筆。
同時に占い師として複数の雑誌で連載を経験。
現在はYouTube、note等での情報発信およびオンラインでの占星学クラス等を開催。
https://note.com/naokookazaki

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