星座とシネマ

Love Yourself !
魚座×「インサイド・ヘッド」

2021.02.20

今月の星座の気分を目覚めさせる一本の映画を肴に、あなたの魂を養うメッセージをお届けする星占い×映画レビュー。
今回取り上げる映画は「インサイド・ヘッド」。
心の世界をめぐるヨロコビとカナシミの冒険を通して、人生に希望を取り戻すプロセスを体験します。

written by Naoko Okazaki

2015年公開のディズニー/ピクサー映画「インサイド・ヘッド(原題:Inside Out)」は、11歳の少女ライリーの心のなかの「感情たち」を主役にした名作アニメ。

ミネソタの田舎から、カリフォルニアの都会に引っ越してきた少女が、新しい環境に感じる不安や孤独を乗り越えて成長していく、という、そこだけ切り取ると平凡な出来事が、
「一方その頃、彼女の心のなかは?」という二重構造になっていることで、ささいな日常も「心」にとっては大冒険なんだと気付かせてくれる。
年齢に関わらず共感できるし、自分の心を振り返るきっかけにもなる。そんな作品だ。

星占い的には、外からは見えない「心の世界」こそまさに魚座の領域なので、今回のテーマにぴったりというわけ。
2月19日から3月20日、魚座のシーズン。
魚座生まれの人はもちろんのこと、すべての人にとってこの季節は自分の「ほんとうの気持ち」に接続するシーズン。

「インサイド・ヘッド」で描かれる通り、態度や行動や見た目に現れることと、心のなかで起きていることは必ずしも一致しない。
正確には、外側に現れることは、心のなかの複雑なプロセスのひとつの「結果」でしかない。
魚座はこの「外からは見えないが、自分だけは知っている心の世界」に光を当てる。

映画の主人公、ライリーの「感情」たちをまずは紹介しよう。

彼女の毎日をハッピーにする「ヨロコビ(喜び:Joy)」、
危険から守る「ビビリ(恐れ:Fear)」、嫌な目に遭わないように回避する「ムカムカ(嫌悪:Disgust)」、ライリーに対する不当な扱いに立ち向かう「イカリ(怒り:Anger)」、
そして最後に「カナシミ(悲しみ:Sadness)」……カナシミは、ライリーを落ち込ませ、泣かせ、気力をなくさせる役割だ。

11歳の少女の頭の中で5つの感情たちは毎日目まぐるしく働いている。
みんなライリーのことが大好きで、それぞれのやり方でライリーを守り、幸せにしようとがんばっている。
だけどカナシミだけは、他の感情たちから見ても一体なんのためにいるのかよくわからない。
 
そんなちょっとしたギモンはあるけれど、おおむねライリーの心はハッピーだ。
ヨロコビがリーダーになって、楽しい時間、楽しい毎日そして願わくばそれがずーっと積み重なって楽しい人生になるように、
気持ちを踊らせているから。ハッピーな時間よ、永遠なれ!
 
ところがライリーの平和な心の世界は、突如大変革に襲われる。
一家が慣れ親しんだ自然豊かなミネソタから、カリフォルニアの都会に引っ越すことになったのだ。
カリフォルニアには大きくて心地の良い家がない。
家族で遊べた広い庭もない。大好きなホッケーをした湖のアイスリンクもない。親友のメグもいない。パパもママも新生活を立ち上げるのに忙しくて前みたいにかまってくれない。
ライリーの心はおそらく生まれてはじめての、大きなアイデンティティ・クライシスに見舞われる。

ライリーのヨロコビは、この緊急事態をなんとか乗りきりハッピーな毎日を死守するため奮闘をはじめる。
だけどなんだか、うまくいかない。
それどころか、今まで消極的だったカナシミが急にそわそわと動き始めて、気が気じゃない。
だってカナシミがライリーの心の記憶に触れてしまうと、楽しかった思い出がカナシミ色に染まってしまうのだ!

そして迎える最初にして最大の試練、新しい学校への転校初日。
ヨロコビは張り切って他の感情たちに指示を出す。
サイコーのカリフォルニア・ライフのためには、なんとしても今日を成功させなくちゃ! そして……

「カナシミ!あなたに超重要な仕事をしてもらいたいの!」
「(嬉しそうに)本当?」
「(チョークで床に円を書いて)完ぺき!これは『カナシミの円』。あなたの仕事は、今日一日カナシミをこの円から出さないことよ」

さて、これは、難しい事態に対応しようとするときのまさに典型的な心の動きだ。
わたしたちはほぼ反射的に、ネガティブな気持ちを「感じないように」しようとする。
友だちがいなくても寂しく思わなければいい。
仕事で失敗しても落ち込まなければいい。
いちいち傷つかなければSNSだって怖くない! 
悲しむから、足が止まってしまう。
動けなくなって、問題が悪化する。
だからお願い、カナシミは、出てこないでじっとしていて!

だけどヨロコビは気づいていない。
そもそもヨロコビが心の舵をしっかり握れているときには、カナシミが動き回っていても何の問題もなかったのだ。
「この円から出てこないで」と言わなければならないくらい、カナシミが大きくなっているときには、
「気にしなければいい」作戦はすでに通用しない段階だ。

そしてライリーは、絶対に失敗できない転校初日の挨拶で最悪の失態を演じることになる。
クラスのみんなも先生も見ている大注目の中、ミネソタが恋しくて泣いてしまうのだ。
(小学生にとって、学校でのこんな失敗はまさにこの世の終わり)

ご存知の通り人生には思いがけない出来事がつきものだ。
どんなにポジティブに乗り越えようとしても、今までに効果のあったありとあらゆる方法を試してみても(美味しいものを食べるとか、素敵な未来を妄想するとか、歌を歌うとか、
友だちとチャットするとか、「ヨロコビ」を心の中心に保てそうなことならなんでも)、それでも上手くいかないことがある。

自分の力ではどうにもできない出来事にぶつかったとき、
わたしたちは11歳のときと同じように無力な気持ちになる。
どうしてわたしは、今までみたいにニコニコできないんだろう? 
みんなみたいに元気になれないんだろう? 
今まで素敵だったありとあらゆることが色褪せて、思い出しても悲しい気持ちが増すばかり。
私の心は、もう空っぽになってしまったんだろうか。

物語は主導権を巡って争ったヨロコビとカナシミが、
心の「司令部」の外にうっかり飛ばされてしまうところから、
どうやって二人で帰還するかというアドベンチャーに突入する。

心の「司令部」からヨロコビがいなくなったら、ライリーはもうハッピーな気持ちになれない。
その恐ろしさに気づいたヨロコビとカナシミは、命がけで(というのは不思議だけど、その勢いで)司令部を目指してがんばるのだ。

ベッドから起き上がれないくらい落ち込んでいるときも、傷ついて笑えないときも、なにもかもムシャクシャするときも、
「ヨロコビ」は必死に心の中心に戻ってこようと頑張ってる。
そんな風に考えるだけでも、自分の心が愛おしくて切なくてたまらない気持ちになってしまう。
また笑いたい。また幸せいっぱいの気持ちになりたい。また前向きに毎日を生きていきたい。
わたしがあきらめても、わたしの「ヨロコビ」はいつだってそう願っている。

そしてライリーのヨロコビはこの旅の最中、とてもとても大切な発見をする。
忘れ去られた記憶のゴミ捨て場に落ちて、もう戻れないかもとあきらめかけたとき、ふと気がつくのだ。
ライリーの人生の大事な「特別な思い出(コア・メモリー)」。
アイスホッケーチームで準優勝した最高の記憶。
その記憶についてカナシミはなんと言っていた?

「チームが大事な決勝戦に負けた日よ。
ライリーが決勝点をミスして、ヘコんで、退団も考えた」
 
そうだ。そうだった。それがどうして、最高にハッピーな思い出に変われたんだっけ? 

「カナシミ……。ママもパパもチームの仲間も、みんなが励ました。カナシミのために」

ハッピーになるためには、心の中心にヨロコビがいなくちゃだめだ。
だけど、自分の力ではどうしても変えられない出来事に出会って、ポジティブなだけでは乗り越えられない壁にぶつかったときには、カナシミの力が必要だ。

カナシミは、自分の無力さと、痛みを受け入れる勇気だ。
変えられない事実をまっすぐに受け止めて、抱きしめる力。
それは、希望と喜びが見えなくなったときにも唯一発揮できる、他人に向かって心を開く方法なのだ。

ミネソタが恋しい。学校で失敗した。ニコニコできない。
助けてほしいと言えることは、勇気なのだ。

この映画は誰もが人生で体験する、行き先を見失った心が新たな希望を取り戻す話。
迷子になったヨロコビが、絶望の底から新しい知恵を見つけ出す話。
その旅の過程で、心を形作るたくさんの記憶と想像に再会する話。
 
記憶のゴミ捨て場から脱出するときヨロコビを助けた、
イマジナリー・フレンド(子供の頃のライリーの落書き)のビンボンのセリフを最後に引用しよう。

月まで飛べる夢のロケットを持つビンボンは、子供心の想像力そのもの。その記憶は大人になるにつれ薄れていく。
11歳のライリーの心にとってはもう淡い思い出だ。
それでもあの頃のワクワクとキラメキは、ヨロコビを心の中心に帰らせる最後のサポートになる。

「僕の代わりにあの子を月へ連れてって」

ヨロコビは、本当にたくさんのものに支えられている。
ママやパパや友だちにも。カナシミや、一見ネガティブに思える他の感情にも。遠い子供時代のイマジネーションにも。
だから夢や周りの環境が変わっても、ヨロコビはずっと続いていく。
心の中心で舵をにぎって、わたしたちを月まで運んでくれる。

今月の名作

インサイド・ヘッド
2015年公開。第88回アカデミー賞®受賞。

ブルーレイ&DVD発売中/ディズニープラスU-NEXT、AMAZON PRIME Videoなどでも配信中。

岡崎直子/元・大手出版社社員。社員編集者からフリーライター期間を通して雑誌・新聞・書籍等で主にファッション系記事を執筆。
同時に占い師として複数の雑誌で連載を経験。
現在はYouTube、note等での情報発信およびオンラインでの占星学クラス等を開催。
https://www.youtube.com/channel/UCkBYHQILkcdeel-0KD7jbAQ
https://note.com/naokookazaki

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